ナインブリックス準備室

オカルト・ホラー専門の古書、DVD販売をしている奴の記録

『現代台湾鬼譚』を読みました

南科技大で教鞭をとる伊藤 龍平氏が、謝 佳静氏の院の卒論をベースに大幅な加筆をした一冊。ナインブリックスでも販売中です。「陰陽眼(例が見えるという能力。いわゆる邪鬼眼)」「鬼(グェイ、日本語で言う幽霊に相当)」「風水」など台湾の一般的なオカルト背景とともに、大学生から聞き取った話や小学生へのアンケートを紹介・分析しています。

台湾はかつて日本が統治していた経緯や「学校の怪談」「トイレの花子さん」のブームなどもあり意外なほど日本とよく似た部分もありつつ、やはり異なる点もありで、そのあたりが何に由来するのか、伊東氏らしい明晰な筆致で考察されています。
ナンパに「陰陽眼持ってんだよ俺」みたいな使われ方がされるなど、いかにオカルトが台湾で身近に根付いているのかがうかがわれ、大変興味深い内容でした。他にも日本の学校では二宮尊徳の像が動く、という話がありますが、台湾では蒋介石の像や校長の像に置き換わっている話やその理由など「近くて遠い」というか、「近いからこそ遠い」台湾の精神世界に触れられます。

他、不勉強ながら本書を読んで初めて知ったのですが、台湾には蒋介石の像ばかりを集めた「慈湖紀念雕塑公園」というのがあるそうで、かなりシュールそうなので行ってみたいと思いました。同じ人の像ばかりが集まってるって、どんな現代アートだよっていう…。

伊東氏は他にも『ツチノコの民俗学―妖怪から未確認動物へ』という、妖怪としてのツチノコからUMAとしてのツチノコまでを追った本も執筆していて、こちらも同じモノが妖怪からUMAへと変貌していく過程と社会背景などが明快に述べられていて面白い一冊です。


とかなんとか書いているうちにフォーカス台湾にて、台北科技大学の学生さんが台湾の心霊スポットをテーマにした地図を作ったというニュースが。シンクロニシティーですね(違う)。
台湾の大学生がユニーク地図作成 心霊スポットをテーマにしたものも
掲載スポットのうち「嘉義の劉家古サク」なんかは本書にも出てくるので、けっこう定番の心霊スポットなんでしょうね。というか、この地図ほしいです。売ってるそうなんですが、やっぱりネット通販とかないですよね…。

というわけで、ナインブリックスでは台湾の心霊本も高価買取中です!

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『怪異の風景学』を読みました。

佐々木高宏先生の『怪異の風景学』を読了。

本書では風景を誰にでも見える実在の場所、場所そのものも含めて特定の人にのみ見える「怪異の風景」、そして両者の中間として実在の場所に怪異が投影されて見える「怪異の見える風景」の3つに分類して、中でも「怪異の見える風景」を中心に文化人類学や言語学の理論を援用しつつ論じています。

「怪異の風景」の例としては桃花源が挙げられていたので、きさらぎ駅とか隠れ里なんかも当てはまると思います。「怪異の見える風景」としては心霊スポットなんかもまさにそうですね。

各論では千と千尋の神隠しや廃墟を題材にしているのですが、メインは「クビナシウマ」の伝承の分析。同一地域に複数バリエーションがある理由や意味付けを集落間の地理的、社会的関係性から読み解いています。特に起源となる事件の被害者となる集落と友好関係にある地域には自分たちの集落経由でクビナシウマを加害者地域へ送ろうとする競争関係があり、加害者地域では表立って語られない伝承として扱われているという図式など、なかなか鮮やかな手並みでした。

このクビナシウマ論考の一部は『怪異の民俗学2 妖怪』にも収録されています。

場所から怪異を読み解くというのはなかなか面白い視点でした。

『怪の漢文力』を読みました

友人から借りていた『怪の漢文力』を読了。中国古典籍や漢詩などを引きつつ、五行思想や俗信などをとおして、その背後にある古代中国での身体観、死生観、性と愛の認識、宇宙観などの精神世界を解説しています。
個人的は儒教が比較的、性や恋愛に対して寛容だったのは人口増が国力増強に不可欠だったからではないか、という話が面白かったです(ホラーもオカルトも関係ない…)。

本書自体も面白いのですが、たとえば代表的な六朝志怪の『捜神記』、同じく中国の古典的な怪談奇談集『聊斎志異』なんかをより深く楽しむ補助線にもなると思います。



表紙がなかなかポップでいいと思っていたら、南 伸坊さんでした。

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